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レーザAtoZ

1:レーザとは

レーザとはなんだろう.

 1916年にアインシュタイン博士が誘導放出の理論を発表し,レーザの可能性を指摘しました.その後いろいろな実験が行われましたが,実際にはレーザ発 振を世界ではじめて成功させたのは,1960年の米国のメイマンです.彼はルビーの結晶を使ってレーザ発振を行いました.その後いろいろなレーザの発振が 観測されました.

 レーザは「LASER」と書きます.これは「放射の誘導放出による光の増幅」と いう意味の英語の頭文字を取ったものです.("Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation")つまり,光を電気信号のように増幅して強くしたものですが,単に強くするだけでなく,非常に質の良い光として増幅するものです.

 原子や分子などはある特定のエネルギを持って運動しています.外部からエネルギをもらうと,これらの原子,分子はさらに高いエネルギを持って運動します (励起状態)[図1.(a)]

しかし,しばらくするとその余分なエネルギを吐き出し,元のエネルギの状態にもどろうとします.吐き出された余分なエネルギは光となって外部へ放出されます (自然放出)[図1.(b)]

 もし,この光が他の高いエネルギを持った原子や分子に衝突すると,そこからも同じ性質の光が放出されます (誘導放出)[図1.(c)]


図1.に自然放出,誘導放出の概念を示します.

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図1.自然放出と誘導放出

 通常は高いエネルギを持った原子や分子の数は少ないので放出される光は非常に弱いものでしかありません.

 しかし,何らかの方法で高いエネルギを持った原子や分子の数を多くしてやると,誘導放出がなだれ現象的に起こり強力な光を放出することができます (光の増幅)

 両端に鏡をおいて放出された光を繰り返し反射させると,光は 特定の方向にのみ増幅され,さらに強力な光となります.これが レーザです.

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レーザはどんな性質を持っているのですか?

レーザの性質を図2.に示します.

(a)単色性に優れている:

いろいろな光が混じりあっておらず,純粋な一つの色(波長,周波数)の光であること.

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図2-(a).単色性

(b)指向性に優れている:

光の進行がほとんど広がらずに進むこと.

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図2-(b).指向性

(c)干渉性に優れている:

光の位相(波の山と谷)が揃っているため,干渉性がよいこと.

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図2-(c).干渉性

(d)高出力である:

レンズで集光すれば太陽光の何百倍ものパワー密度が得られること.

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図2-(d).高出力性


これらの性質を利用した各種の応用分野が多くあります.たとえば,波長が単一な(単色)光であるため,各種の計測やディスプレイに応用できます.通常光では完全な単色光でなく,また,色フィルタを通しても弱い光しか得られません.

また,レーザの指向性は通常光と比べて桁違いによいため,計測,測量 などに利用されるのです.また,波の非常によく揃った光である性質を 利用した干渉計測,測定もレーザ以外の光では精度のよい測定はできません.

このようにレーザが利用される理由は従来の光でできなかったことや, できても精度が悪かったものを非常に高精度に測定するなどの利点があるから です.

さらにレーザの光が人工的に制御しやすい光であることも大きな理由と なっています.光の波長,光束(ビーム径)の大きさ,強さなど自由に設計, 可変できることが利用価値の高いところとなっています.

レーザ加工は主に(d)の高出力である性質を生かした応用分野です.

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レーザ加工に使用されるレーザはどのようなものですか.

表1.に代表的なレーザの種類とその主な仕様を示します.1960年に レーザ発振が成功して以来,各種のレーザの研究が進みました.現在その数は 数百種類に及んでいます.レーザ媒質(レーザ発振の元)で分類すると,固体, 液体,気体のすべての状態でレーザ発振が可能で,出力では mW 以下のものから 数十kW の大出力まで得られています.また,図3.に示すように,光の波長では 紫外線から可視領域,赤外線領域にいたるまでのレーザ発振器があります.

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種類

波長(μm)

発振形式

出力(W/J)

効率(%)

用途例

固体レーザ

ルビー

0.69

P

~20J

~1

穴あけ

ガラス

1.06

P

~90J

~4

穴あけ,核融合

YAG

1.06

P/CW

CW ~ 1kW, P ~ 150J

~3

穴あけ,切断,溶接

半導体レーザ

GaAs,InGaAsPなど

0.6~1.6

P/CW

CW ~50mW

~100

通信,計測,情報処理

液体レーザ

色素レーザなど

0.4~0.7

P

~100J

~0.3

分光,研究

気体レーザ

He-Ne

0.63

CW

~1mW

~1

計測,ディスプレイなど

Ar

0.51

CW

~25W

~0.1

穴あけ,計測

エキシマ

0.15~0.35

P

~900mJ

~15

化学,医学,加工,その他多数

CO2

10.6

P/CW

CW ~40kW

~20

穴あけ,切断,溶接,熱処理

 
レーザ加工を行うためには,大きな出力を安定して得ることのできるレーザ 発信器が必要です.この条件に当てはまるレーザは固体レーザではYAG(ヤグ), ルビー,気体レーザではCO2,Ar(アルゴン),エキシマレーザなどです. このうち,CO2レーザは連続,パルスとも発振でき, 発振効率も高いので最も広く応用されています.また,YAGレーザは パルス発振において,高いピーク出力が得られることや 光ファイバを使えることなどから,活用されています.

 また,エキシマレーザは高エネルギの紫外線光が取り出せるので,レーザ加工に おいて最も注目されているレーザの一つです.今後,一層に応用が進むものと 思われます.このほか,加工用レーザとしてCOレーザやヨウ素レーザなどが開発 されていますが,現在使用されている加工用レーザの主流はCO2とYAGレーザと 言ってよいでしょう.

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