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レーザAtoZ

2:レーザ加工とは

どのようにしてレーザ加工を行うのですか.

 出力の高いレーザビームをレンズなどで集光させると焦点付近でパワー密度は非常に高いもの(106 W/cm2 程度以上)となります.例えば,出力 1kWが焦点位置で半径 0.1mmに集光されたとしますと,パワー密度は

atoz2_1.gifと計算されます.このパワー密度でもって加工物へ照射するとそのエネルギが吸収され,加工物の表面温度が急激に上昇し沸点に到達します.

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Fig.1 レーザによる加熱におけるパワー密度の影響.

 Fig.1に集光レーザビームを照射したときの加工物の温度分布を示します.(a)は沸点まで到達せず加熱されただけで状態, (b)は融点まで達し,溶け込みができた状態(従来のアーク熱源に相当), (c)は沸点に達し,蒸発を開始し蒸気の圧力で周囲の融液が押しのけられた,高エネルギ密度熱源特有の状態です.[1]

 レーザは (c)の状態を得ることができる高エネルギ密度熱源です.そして,照射するレーザのパワー密度などを制御することで,これら (a) (b) (c) の状態を幅広く容易に得ることができる熱源です.このことで各種加工に幅広く応用できるわけです.参考として,Fig.2 に代表的なレーザ加工法で照射時間とパワー密度による分類を示しておきます.

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Fig.2 照射時間とパワー密度によるレーザ加工の分類.

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どのような加工ができるのですか.

 Fig.3 にレーザ加工の一般的な分類を示します.レーザ加工は,除去加工,接合加工,表面改質の3つに大別され,これらはさらに細分化できます.除去加工という分類の一つにレーザ切断があり,接合加工の中にレーザ溶接があります.
 表面改質は図に示した以外にも多くあり,次々に新しい加工法が提案されています.レーザ発振器の種類(波長),出力波形(連続/パルス)によって応用範囲は異なりますが,レーザ加工は非常に広範囲に応用できる加工法であるといえます.

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Fig.3 レーザ加工の分類.

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どの分野のレーザ加工がよく利用されていますか.

CO2,YAGレーザは汎用のレーザ加工機としてかなりの地位を築いてきていますので,市場動向などが示されています.その中での用途別の分類参考として Fig.4 に紹介しましょう.[2]

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Fig.5 CO2,YAGレーザ加工機の用途別分類.

CO2レーザ加工機は現在,国内では除去加工(切断,穴あけ)が75%程度と圧倒的に多く利用されています.また,20%ぐらいが溶接加工で,5%が表面改質,研究,その他となっています.ただ,ヨーロッパ,北米の例では,溶接加工の比率がもう少し高いと言われています.
一方,YAGレーザ加工機はマーキングと切断,溶接,穴あけ合わせて80%でその主流となっています.それ以外はトリミング,スクライビングなどの各種加工となっています.
レーザ発振器の種類によって得意の加工分野があると言えます.また,両者の適用加工法を Fig.3 の分類で考えますと,ほとんどが除去加工と言えるでしょう.そして,接合加工と続き,表面改質は数%と非常に少なくなっています.それだけ,レーザによって除去加工は実用化しているということでしょう. 

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一つのレーザ加工機でいろいろな加工ができますか.

 基本的には熱源であるレーザ発振器をどう応用するかですので各種加工が可能です.ただし,加工法により,加工ガスやノズルの大きさ,集光系などが異なり ますので,適当なものを選択しなければなりません.研究用としては一つの発振器で各種レーザ加工が行われていますが,実用上は加工材の形状を含め,生産性 など考慮にいれる項目が増え,実現性を難しくしていきます.
 Fig.5 に代表的なレーザ加工の切断,溶接,表面焼き入れの簡単な原理を示します.構成上,発振器より出力されたレーザビームを集光系に導くまでは大差はありませんが,それ以降が異なってきます.

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(a) レーザ切断

集光したレーザビームと同軸にアシストガスを高速で吹きつけ,溶融物を吹き飛ばす.金属切断はアシストガスに主として酸素を用い燃焼反応のエネルギーも応用している.


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(b) レーザ溶接

レーザの高密度エネルギーによるキーホール溶接.酸化防止とスパッタ防止のためノズルよりヘリウム,アルゴンなどのガスを流す.


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(c) レーザ表面焼き入れ

レーザビームを広げ,表面に高エネルギーを照射する.材料自身の熱拡散によって表面は急速冷却される.ノズルからは酸化,スパッタ防止用のヘリウム,アルゴンガスなどを流す.


Fig.5 レーザ加工の原理.

参考文献
[1] S.Elliott "Joining dissimiller metals by electron beam and laser welding" TWI research report,1983
[2] レーザ新報,No.125,1996.1.8

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